仕事の話

【製作進行】映画・ドラマの撮影現場のお仕事体験談

社畜肯定論

こんにちは。ろーれる(@Laurel_DKO0930)です。

10年以上前、映画やドラマの「製作進行(制作進行)」という仕事をしていました。

何となく映画に関わる仕事がしたいと思って今の会社に就職したものの、撮影現場で働きたいという希望は全くありませんでした。

何の間違いか軟弱者の自分が修羅場に投入され、荒波にもまれまくりました。

東京から来る俳優さんも「京都はヤバイ」と本気で怖がっていた時代です。

当時の撮影現場にはヤバイ先輩たちが大勢いました。

今もう一回やれって言われたら絶対嫌ですけど、振り返ってみるとものすごく楽しく感じられるのが不思議です。

ということで当時の撮影現場でのお仕事体験談をつづろうと思います。

現在はこんな世界は存在しませんので、あくまでもファンタジーです。

ネタ記事としてお楽しみください。

  • 10年以上前の体験談です。現在では撮影現場の就労環境はかなり改善されています。
  • パワハラやブラック企業を肯定する意図は全くありません。
  • 武勇伝では決してありません。当時(今でも?)の私はスーパー仕事できないマンでした。

製作進行ってどんな仕事?

カチンコ

映画やドラマのエンドロールには、出演者と大勢のスタッフの名前が載っています。

監督撮影照明といったパートは、文字を見るとどんな仕事をしているのか何となくイメージが浮かぶと思います。

でも製作進行制作進行)って何をしている人たちなのか、詳しくない人にはなかなかイメージがしづらいのではないでしょうか。

ざっくりと言えば「予算とスケジュール通りに撮影を進行させる」という仕事です。

具体的にどんな仕事をしているかと言うと、

  • 撮影場所を探してくる(ロケハン)
  • ロケバスなどの車両を手配する
  • ロケ弁当や撮影備品を準備する
  • スタッフ・キャストのアテンド、車両や通行人の誘導、現場の養生、トラブルや苦情の処理など
  • 撮影・照明・録音など各部スタッフのお手伝いやお使いと各部間の連絡調整
  • 各部スタッフの仕事ではない仕事
  • その他雑用全般

こんな感じです。

製作進行の上司には「製作担当」「進行主任」というポジションの人がいます。

担当や主任は撮影のスケジュールや予算を組み立てます。

進行はそのスケジュールと予算に従い、動き回る仕事です。

製作進行の体験談

会社の偉い人から作品の脚本を渡されるとお仕事が始まります。

この瞬間から撮影が終了(クランクアップ)するまで休日を期待してはいけません。

2時間ドラマの場合、準備期間は3 〜4週間、撮影期間は撮影がない日を含めて3週間弱、合わせて1ヶ月強は休みが取れないのです。

(期間中に休みがあったら超ラッキーです)

映画やスペシャルドラマを担当すると拘束期間はもっと伸びますし、クランクアップしてすぐに次の仕事を担当することもあります。

個人的な連続出勤記録は103日でした。同僚には1年に362日出勤した猛者もいました

製作進行のお仕事はいろいろありますので、いくつかピックアップします。

準備期間
  • スタッフルームの準備
  • ロケハン
  • 備品の準備
  • お酒

撮影期間
  • ロケ車両やロケ弁当の手配
  • 撮影現場での進行業務
  • お酒

制作進行のお仕事【準備期間】

スタッフルームの準備

各組にスタッフルームが用意されますので、まずは部屋の掃除です。

撮影のチームは監督の名前を冠して「○○組」と呼ばれます(「黒澤組」「深作組」など)

前に使用していた組が片付けていないゴミみたいなもの(本当にゴミかどうかの判断は個人による)を捨てたり、筆記用具などの消耗品を用意したり、ホワイトボードに決まっている予定を書き込んだりします。

私が新人の頃は、ベテランのスタッフはルームでお酒を飲みながら楽しく仕事をしていました

ルームに残されているマムシ焼酎や飲みかけの酒を捨て、新しいビールやワインを冷蔵庫で冷やしておくのも大事な仕事です。

(マムシ焼酎は2回しか見たことありませんが…)

またタバコがプラズマクラスター代わりという就労環境でしたので、人数分の灰皿が揃っているかチェックしておかなければいけません。

最初の顔合わせ兼打ち合わせの日が近づいてくると、ベテランの先輩方(ほぼ50歳オーバー)がルームに詰めるようになります。

「いよいよ始まるな!」と気が引き締まると同時に、何故だか服役囚のような気持ちになるのが不思議です。

ロケハン

準備期間中における製作進行の最大の仕事がロケハンです。

ロケハンとは、ロケ場所を探したり下見に行くことです。

和製英語【ロケーションハンティング】の省略形です

脚本の場面をステージ(セット)で撮影するのかロケーションに行くのか整理し、イメージに合ったロケ地を探します。

会社のオフィスやお店などは広範囲に連絡してお願いしていけば、ご協力いただけるところが見つかってきます。

しかし一軒家などのロケ地は、不動産屋さんから空き家を借りない限りは飛び込み営業するしかありません。

殺人事件の現場という設定でロケをやらせてください!

と一軒一軒元気よくお願いして回ります。

当然ながら99%断られます。

やっと協力先が見つかっても、監督たちが実際にそこで撮影をすると決めてくれるかは別問題。

そのため一つの場面につき数カ所のロケ候補地を用意しなければいけません。

現代劇の2時間ドラマではロケ地が数十箇所あるので、かなりつらい作業になります。

当時はストリートビューやLINEとかクラウドシステムなんていう便利なものもなく、とにかくアナログに作業を続けるしかありませんでした。

いまや廃刊寸前の電話帳が活躍する機会も多かったです。

 

撮影許可をもらったロケハン先に、今度は監督やカメラマンなどのメインスタッフを連れて行きます。

実際に撮影する場所を決めるロケハンです。

何箇所も見せても監督のイメージや条件に合わなければ探し直しです。

メインロケハンでの最大の難事が昼食

グルメな先輩たちを満足させる店にお連れしなければ、指導を受けるのでかなりの重要ポイント。

王将に連れて行こうとしたら、めちゃくちゃ怒られたこともあります。

王将美味しいのに…

全てのロケ地が決まるまでロケハンは続きます。

備品の準備

機材などはもちろん各部署が準備しますが、撮影現場で必要な備品を集めます。

医薬品、タオル、古毛布、サポーター、傘、カッパ、イージーアップ、虫除けグッズ、カイロやストーブなどの暖房器具(夏場は扇風機やクーラーボックスなど)などなど。

会社に在庫が無いものは買うしかありませんが、それより前に他組から分捕ることを上司から要求されることもありました。

この人本気で言ってるのかな?

哀れに思った先輩(も同じ経験をしている)が恵んでくれることはあっても、新人が他から分捕るなんてできるわけがありませんよね。

結局は怒られながらも買いだしに行くしかありません…。

そして自分が買ったものは他の組が狙っているので自衛する必要があります。

油断しているとロケ当日に無くなっていることも。

腕力自慢の主任や担当が上司だったら、守ってくれるので少しは安心できます。

日本史で習う「武士の発祥」にそっくりな状況…

もちろんその頼りになる上司が、次回の仕事では敵方に回ることもあるわけなのですが…。

宴席で先輩たちから素敵なアドバイスを聞く

上で書いた以外にも仕事は無数にあります。

上司次第ではありますが、その全てを基本的には自分ひとりでやらなければいけません。

1日が24時間では全然足りない日々ですが、夕方頃になるとスタッフルームで楽しい宴会が始まります。

仕事が山積みでもひとまず置いて、麦焼酎のお湯割を作ったり、冷蔵庫からスーパードライを取り出したり、灰皿を綺麗にしたり給仕に専念します。

酒の席でなければ決まらないことがある」という信念のもと、重要な情報ものすごくためになるアドバイスがスタッフルームに飛び交います。

9割以上が自慢話他人の悪口のような気がするのは、気のせいです。

こっそり抜け出して別室で仕事をしているのが見つかれば、指導の後にルームに連れ戻されます。

不正はいけません。

日付が変わる前にお開きになれば超ラッキー。

ビールの缶とタバコの灰が散乱した部屋を片付けて、施錠したら空が明るくなっていることも珍しくありません。

「大学出てまで俺何やってんだろ」と思いながら、シャワーを浴びに家に帰ります。

製作進行のお仕事【撮影中】

既にフラフラになっていますが、いよいよ撮影開始(クランクイン)です。

ロケ車両とロケ弁の手配

伝票を作成し、トラックやマイクロバス、ワゴンなどを手配します。

超手書きの作業なのでかなりイライします。

ロケ弁当(ロケ弁)の手配も必要です。

いい歳して好き嫌いが激しいスタッフもいて、嫌いなメニューが入っていると怒られることもあります。

いちいち構ってられませんので、犬に噛まれたと思って諦めるしかありません。

ロケーション

鴨川定番のロケ地鴨川。これだけ人が少なければ楽なんだけど…

ロケーション当日は、出発時間の2時間前に出社します。

天気予報をチェックしたり、各車両のドライバーさんに地図を配って駐車位置を説明したり、備品を車両に詰め込んだりします。

早朝ロケのときはスタッフに朝食を配る仕事も付け加わります。

撮影現場に到着すると、担当者にご挨拶をして、スタッフを現場に誘導します。

「電源はどこだ」

「隣の部屋に入りたいけど鍵がかかっている」

「タバコはどこで吸ったらいいの」

「先生トイレ」

などとスタッフから一挙にリクエストが来るので、それらをマッハで処理していきます。

車両が指定の位置に駐車されているかどうかのチェックも必要です。

駐車・荷下ろし絶対NG」と説明したはずの場所に撮影車両が駐まっていることも多く、慌てて誘導します。

そうこうしている内に俳優さんが到着するので、現場や控室に案内します。

アウトドアのロケ地では、通行の方がカメラフレームに入らないように誘導したり、近所の工事現場の音止めに走ったりします。

スタッフ・キャストから「寒い」と言われたらホッカイロやストーブを用意したり、「虫」と言われたら殺虫剤と蚊取り線香と虫除けスプレーを持って走ります。

撮影の進行状況をチェックして、会社に残っているスタッフに連絡して追加の俳優さんを送り出してもらったり、到着した俳優さんをアテンドしたりという仕事もあります。

早く呼びすぎると俳優さんに気を使いますし、遅く呼ぶと現場を待たせて針のムシロ状態になる難しいお仕事です。

現場移動があると俳優さんを送り出し、マッハで備品を片付け、担当者に挨拶して移動します。

次の現場でも同じ作業の繰り返しです。

 

こういう状況の中、明日・明後日の諸連絡や準備の手配も行います。

食事をとる時間もほとんどありません。

宴席で先輩たちから素敵なアドバイスを聞く

その日の撮影を終え、フラフラになって会社に戻ると、スタッフルームで楽しい宴会が始まります。

あ、これはもういいですかね

夜が明るみだしたころ「大学出てまで俺何やってんだろ」と思いながら家に帰ります。

製作進行を経験して

当時は自分が何をやるべきなのかも分からず、ひたすら走り回っていました。

特に私は出来が超悪かったので怒られてばかりでした。

社畜をはるかに越えて奴隷になっていたと思います。

「何でこんな仕事をやってるんだろう」と初めからネガティヴに思っていたので、成長も遅かったと思います。

製作の仕事がリアルタイムで楽しいと思い始めたのは4年目。

ある映画の現場に投入されたところ、自分でも驚くほどサクサク仕事を片付けられました。

何かつかんだかも!

しかしこの現場を最後に、総務・厚生・経理の部署に異動になりました…。

製作進行を経験して良かったこと ①成長できた

どんな仕事でも得るものはあります。

自分なりに成長できたと思うのは、

  • 打たれ強さと図太さ
  • 社交性
  • 仕事の効率化

という点です。

最初のころは先輩たちの「指導」にいちいち傷ついたりしていましたが、途中からだんだん気にならなくなりました。

「○すぞ」とか「○ね」なんて「おはよう」くらいのレベルです。

手足が飛んできてもスキンシップの一環です、とはさすがに割り切れませんでしたが…。

ミスをしても動じず、リカバリーするためにはどうすれば良いか次の段階を考えられるようにもなりました。

 

人見知りな性格も、仕事上では社交的になります。

(プライベートではいまだに対人恐怖症ぎみ)

他人に気持ちよく話を聞いてもらうためには、どうしたら良いかずっと考えていました。

 

膨大な仕事に優先順位を付けて処理していく方法も、何となくわかってきます。

ズルイかもしれませんが、後回しにしたままやらなくても良い仕事もある、ということに気づけたのは良かったと思います。

「全部やるのは無理」と割り切るのも大事です。

製作進行を経験して良かったこと ②オフのときは時間が自由に使えた

オフのときは、自由に時間が使えたのでリフレッシュのために旅行に出かけるなど、好きなことができるのは魅力的でした。

仕事がなければ長期で休みを取っても何の問題もありませんでしたので、公私のメリハリをつけられました。

製作進行を経験して良かったこと ③ネタにできることをたくさん経験できた

話のネタが山のようにできました。

この記事もそうですが、ここに書いていないこともたくさんあります。

いまだに飲み会とかでも使えるようなネタもあります。

9割以上が不毛な内容だった先輩たちの武勇伝にも、5%くらいは本当に楽しめるネタもありました。

終わりに

現在では、人員の増強・就労時間の短縮化・パワハラ行為の禁止・職場でのアルコールの禁止などの対策がされましたので、就労環境は改善されています。

ブラックな環境を肯定するつもりは全くありませんが、当時の方が撮影現場に「熱」があったのは事実です。

今はコンプライアンスがしっかりして、無茶苦茶なことはできませんし、やりたくもありません。

でも当時の「熱」は時折思い出して、作品作りに精進しないとなと思います。

ABOUT ME
ろーれる
ろーれる
うどん県出身。京都在住。 映画会社に勤めています。一児の父。 映画やドラマ、旅行やお気に入りの物などについていろいろ書いていきたいと思っています。