こんにちは。ろーれる (@Laurel_DKO0930)でござる。
春日太一さんの新著『時代劇ベスト100+50』を読みました。
2014年に刊行された新書『時代劇ベスト100』に50作品を追加し、名作時代劇150作を紹介した文庫本です。
- 映画好きな人
- 時代劇に興味はあるけど、何から観れば良いのか分からない人
- Amazonプライムで最近の作品は見尽くした人、何を観ればいいか分からない人
にオススメの本です。
時代劇の辞書としても使えます。
どんな本? 〜概要〜
『時代劇入門ベスト100+50』は2020年6月に光文社「知恵の森文庫」から刊行されました。
本文のページ数は319ページです。
作品をネット検索しながら読んでいくと、読了まで5〜6時間掛かりました。
一つの時代劇につき見開き2ページで、年代順に作品のあらすじや俳優の芝居など見所を紹介しています。
本の目次
新書版はじめに
第一章 これだけは押さえておきたい50本
第二章 隠れた名作65本
第三章 個人的な趣味で選んだ35本
文庫版あとがき
索引(五十音順)
著者:春日太一さんプロフィール
春日太一(かすが・たいち)
1977年生まれ。映画史・時代劇研究家。日本大学大学院博士後期課程終了。
著書『時代劇入門』、『天才 勝新太郎』、『時代劇は死なず! 完全版 京都太秦の「職人」たち』、『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』など
春日さんは2020年3月に『時代劇入門』という本も出版されています。
時代劇を敬遠しがちな人たちに向けて、作品の魅力を分かりやすく面白く解説した名著です。
『時代劇入門』もオススメします。

『時代劇ベスト100+50』 〜書評〜
圧倒的な物量 映画・ドラマ150作品
紹介している作品数はタイトル通り150作品。
しかも「150作」と言っても、大河ドラマやテレビシリーズのように何十話もある作品も「1作」と数えています。
当たり前ですが、ただ単に観賞した150作を紹介しているのではなく、膨大な量の作品から150作を厳選しています。
これだけの作品を観た上で書いているのだから、そりゃ説得力ありますよね。
本編よりも面白い?作品の魅力を十二分に伝える文体
紹介文がとにかく熱くて面白いです。
リアリティのある筆力で、本当に本編映画を観ているかのような臨場感があります。
紹介文によっては、映画やドラマそのものより面白いかも?
その作品を「観てみたい!」と思わせてくれる文章です。
『切腹』(1962)の紹介文より引用
ほとんど口と表情を動かすことなく台詞を言う脱力した芝居で、感情のない冷血漢を不気味に演じていた三國。一方、仲代は絶えず明るい表情で三國に語りかける。その関係性が、時を経るに従い変化していく。
アクションものの解説などを読んでいると、春日さんが「時代劇はファンタジー」(『時代劇入門』より)だと評価する理由がよくわかります。
剣豪同士の果し合いなどは、スターウォーズやガンダムの戦闘シーンと同じ世界観で繰り広げられていると思います。
扱う作品の制作年代とジャンル
『時代劇ベスト100+50』で紹介されているのは、戦後から21世紀初めまでの作品です。
2010年以降に制作された作品で本書で扱われているのは、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙ーサイレンスー』(2016)など3本だけです。
戦前の作品まで含めてしまうと、紹介する作品の量は膨大になってしまいますし、読者も「気軽に観てみよう」という気持ちが無くなってしまうでしょう。
また『るろうに剣心』などの作品は、「読者に時代劇を知ってもらう」という本書の趣旨からも外れるのだと思います。
扱われているジャンルも、アクション、残酷もの、文芸もの、人情もの、痛快もの、ポルノ、と多岐に渡っています。
いろんなジャンルの作品が載っていますので、必ずお気に入りの作品が見つかると思います。
※誰でも知っているような『水戸黄門』『暴れん坊将軍』などの作品は掲載されていません。
索引がうれしい!
巻末の索引にはDVD・BD化情報だけでなく、AmazonやHuluなどのネット配信の情報も掲載されています。
紹介だけしておいてあとは読者任せではなく、本当にその作品を観てほしいという気持ちが伝わってきますね。
2020年4〜5月はコロナの自粛期間ということもあってAmazonPrimeで無料で観られる作品が多かったのですが、今は無料視聴作品は少なめです。
また配信されることもあると思いますので、定期的にチェックしてみてください。
まとめ
春日さんの膨大な知識量の一端に触れられる本でした。
この本がきっかけで、時代劇を観る人が増えてくれたら良いなと思います。
見開き2ページで一つの作品紹介が完結している構成なので、どこからでも読み始めることができます。
まずは「タイトルを聞いたことがある」作品だけ読んでみる、という使い方もできると思います。
- 実際に映画を観ているかのような臨場感あふれる本
- 作品の見所を適切に解説
- 巻末の索引が便利でうれしい