SF

【グエムル〜漢江の怪物〜】 すごいぞポン・ジュノ3

作品概要

タイトルグエムル〜漢江の怪物〜
監督ポン・ジュノ (『パラサイト 半地下の家族』など)
脚本ポン・ジュノ
出演ソン・ガンホ ぺ・ドゥナ コ・アソン 他
劇場公開日(日本)2006年9月2日
配給(日本)角川ヘラルド映画
観賞劇場・媒体Amazon Prime Video ※Prime会員特典作品

2020年4月現在、Amazon Prime Videoでプライム会員特典作品になっているポン・ジュノ作品は『スノー・ピアサー』『母なる証明』と、この『グエムル〜漢江の怪物〜』の3つです。

 

<制作年の逆の順番でレビューを書きました>

スノーピアサー レビュー
【スノーピアサー】 すごいぞポン・ジュノ『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督作品である『スノーピアサー』のレビューです。ネタバレなし。...
【母なる証明】すごいぞポン・ジュノ2『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督の作品『母なる証明』のレビューです。ネタバレはありません。...

VFXの怪物が暴れ回る、SF特撮映画です。

2006年の作品なので、VFXは現在よりも粗くはありますが、気になるレベルではありません。

むしろ15年近く前に、既にこのレベルのVFXが存在してたことに驚きました。

荒唐無稽な話ではなく、家族愛を中心としたストーリー性溢れる良作です。

あらすじ

ある日の昼下がり、ソウルの漢江河岸に巨大な爬虫類のような怪物が現れ、大勢の人間を襲う。

河岸で露天を営んでいたカンドゥ(ソン・ガンホ)も、娘のヒョンソ(コ・アソン)が怪物の犠牲になってしまう。

そればかりか怪物は謎のウイルスをばら撒いているらしく、怪物と濃厚接触したカンドゥ一家は保菌者として、軍に身柄を確保される。

絶望と悲しみのどん底に叩き落とされたカンドゥに、死んだとばかり思っていたヒョンソから助けを求める電話がかかってくる。

カンドゥたちはヒョンソが生きていると周囲に訴えるが、全く相手にされない。

やむなくカンドゥたちは病院を脱走し、自分たちの手でヒョンソを救うために漢江へ向かう。

レビュー

ボン・ジュノ作品の特徴

『スノー・ピアサー』『母なる証明』では、ポン・ジュノ作品の特徴として、

  1. 主人公は下流階級に属している
  2. グロテスクな描写とユーモラスな表現のバランス
  3. 伏線、そして伏線

の3点を挙げてレビューしましたが、今回は③伏線の要素は薄いです…。

後半まで生きてくるのは、ナミル(パク・ヘイル)の兵役経験と、ナムジュ(ペ・ドゥナ)のアーチェリーくらいでしょうか。
伏線と言えるレベルでは無いかもしれませんけど。

①と②の特徴は今回もありますね。

カンドゥ一家は、漢江のそばで露天商を営んでおり、決して裕福ではありません。

長男のカンドゥは、貧困と親の育児放棄による栄養不足のために、頭の回転が悪くなったと父が嘆いています。
次男のナミルは、大卒の高学歴ですが、無職です。少々自棄になり、飲んだくれになっています。

カンドゥ一家が、ヒョンソが生きていると訴えても警察も誰もきちんと聞いてくれません。
それは、カンドゥの思考力に少々問題があると見做されているのが最大の理由でしょうが、一家の経済状況にも理由があるように思われます。

グロテスクさとユーモアは、今回はふんだんに盛り込まれています。

また、これ以外のポン・ジュノ作品の特徴として、「雨」が挙げられるかもしれません。
『スノー・ピアサー』には雨は降りませんでしたが、『パラサイト 半地下の家族』も『母なる証明』も重要な場面で雨が降ります。

今作でも、中盤から終盤までほぼずっと雨が降っています。

とは言え、韓国映画は雨が降っている作品が多い気もしますので、ポン・ジュノ作品の特徴というより、韓国映画全般の特徴なのかもしれません。

怒涛の序盤戦

『母なる証明』では、ある意味ものすごいオープニングでしたが、今回はきっちり「ツカミ」から入ります。

始まりは、米軍基地から大量の薬物が漢江に不法投棄されるシーン。
そして2年後に話が飛び、奇形の魚を発見する漢江の釣り人。

さらに4年飛んで、作品の現在軸へ。
麗かな昼下がり、漢江岸での穏やかな時間を楽しむ人々。
カンドゥも、娘のヒョンソとテレビでアーチェリー大会に出場している妹・ナムジュを応援しています。

そんな牧歌的な風景に、突如現れるグロテスクな怪物。
人々に襲いかかり、のどかな河岸は一瞬で阿鼻叫喚の地獄絵図に。
反撃を挑むカンドゥですが、怪物はヒョンソを引きずりこみ漢江に姿を消します。

ヒョンソの死を悲しむ一家は、怪物と濃厚接触したということで軍に身柄を確保されます。
そして、真夜中にカンドゥの携帯が鳴ります。
相手は、死んだと思っていたヒョンソで、どこかの地下水溝に閉じ込められているとのこと。

ここまでであっという間の30分です。
一気にストーリーに引き込まれます。

三幕構成で言うと、第一幕。
物語の状況が設定され、真のストーリーが始まるまで、ということになります。

・カンドゥは怪物を退治し、ヒョンソを無事救出できるのか

・怪物と、怪物がばら撒いているウイルスの正体は何か(ウイルスに感染するとどうなるのか)

という物語の方向性が、この時点で示されます。

スリリングな展開で最後までグイグイ引っ張っていき、それぞれの解決も意外な方向に持って行きます。

街中ではみんなマスクをしていて、咳き込んでいる人がいると周囲が露骨に顔をしかめる、というシーンがあります。

今のコロナ騒動と完全に同じ状態ですね。

社会風刺の物語でもあるらしい

Wikiなどを読むと、ポン・ジュノ流の社会風刺の物語でもあるそうです。

確かに米軍は怪物の産みの親でもありますし、カンドゥに人体実験みたいなことを行うなど一貫して悪役にされていますが、そこまで鼻につく感じはしませんでした。

社会風刺というと、テーマがそちらばかりに行ってしまって、ストーリーやエンタメ性がなおざりにされている作品も多いイメージがあります。

しかし、この作品はSF特撮ジャンルの作品としてエンタメ性に富んでいますし、家族愛という観点からもホロっとできる物語に仕上がっています。

まとめ

プライム会員なら追加料金無しで見られるポン・ジュノ3作品
『スノーピアサー』『母なる証明』『グエムル〜漢江の怪物』

私は制作年を遡る順番で鑑賞しましたが、素直に制作年順で観るのが良いでしょう。
というのも、映画のメッセージ性というか文学性は、やはり後の作品になるほど高まっているように思うからです。
どれか一つだけ観るとしたら、個人的には『母なる証明』をお勧めします。

スノーピアサー レビュー
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ろーれる
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うどん県出身。京都在住。 映画会社に勤めています。一児の父。 映画やドラマ、旅行やお気に入りの物などについていろいろ書いていきたいと思っています。
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